南極点でくらす1年間のきろく

アイスキューブニュートリノ望遠鏡のWinterover(越冬観測員)として、1年間南極点のアムンゼン・スコット基地に滞在しています。家族、友達のみんな、まだ生きてます。

このブログについて


南極大陸はまだしも、そのだいたい真ん中に位置する南極点と言われて何か想起するものを持っている人は少ないのではないでしょうか。 1911年のアムンゼン隊の初到達のこと、たった1ヶ月遅れで到達したスコット隊に訪れた悲劇のことなどをご存知の方はいるかもしれません。 僕も大学院に入るまではその程度の知識しかなく、今日の南極点といわれても、茫漠とした氷原の中にぽつんと小さく石が積み上げられたケルン1でもあるのだろうと思っていました。

初めて知ったときは本当に驚いたのですが、現在の南極点にはアムンゼン・スコット基地と呼ばれるアメリカの施設があります。 基地の外観のライブカメラまであります。 ちなみに極夜真っ只中の今日の南極点の気温はマイナス72度、体感温度マイナス96度だそうです。 人類ってすごいですね。

基地では一年を通して様々な科学観測が行われており、その保守運用のために毎年数十人のWinterOver(越冬隊)が派遣されます。 今回、僕は2019年11月頃からこのWinterOverの一員として、1年間南極点で働く機会を得ることができました。 たぶん南極点で越冬するのは日本人としては初めてだと思います(そう願っています)。 (追記:どうも1960年に一人いらっしゃったようです。ほかにもいるかも。追追記:1977年にもうひとりいらっしゃったようです。3人目でした。)

僕がWinterOverとして参加するのは、IceCube Neutrino Observatory (アイスキューブニュートリノ望遠鏡)と呼ばれる、宇宙から飛来する高エネルギーニュートリノを観測する実験の検出器の運用を行うためです。 アイスキューブ2実験が観測するニュートリノという粒子は検出が極めて難しいものの、宇宙で起きている高エネルギー現象を理解するのに優れた、(光や宇宙線とは独立した)宇宙を見る新しい"目"を我々に与えてくれます。 実際にこれまでアイスキューブ実験は、宇宙線物理学や広く宇宙物理学にとって重要な成果を発表し続けてきています。 アイスキューブ実験には日本からは千葉大学が参加しており、僕はそこで2年間研究員として経験を積み、この夏からはウィスコンシン大学を雇用元としてWinterOverのポジションを得ることができました。

2019年8月から11月頃まではアメリカのウィスコンシン州マディソンにてWinterOverとしての訓練を行い、以降南極点に赴任後は1年間滞在し2020年11月頃に現地を発つことを予定しています。

ブログのようなものを書くのは初めてなんですが、

  • 友達と家族に生きていることを知らせる
  • 友達と家族に忘れられないようにする
  • 日本ではあまり知られていない南極点での活動を、きれいな写真を沢山載せながら紹介する

を目的として、マメに更新していければと考えています。 このブログは完全に趣味ですが、公式のレポート(英語)も実験グループのウェブサイトで更新されていくので、興味のあるかたはそちらも見てみてください。 書くのに頭を使うような、難しいところは今後積極的にすっ飛ばしていきますが、例えばどうやってニュートリノを検出するか、なぜ南極点でなくてはいけないかというところは面白いところなので、そのうち説明するつもりです3

ベースラインは今日は何を食べたとか、オーロラがきれいだったとか、ヒゲがこれくらいの長さになったとかそういうブログになると思います。


  1. よく考えれば石なんかある訳ないんですが。

  2. N.W.Aのあの人とは関係ないです。

  3. 南極にいって暇になったら、きっと。