南極点でくらす1年間のきろく

アイスキューブニュートリノ望遠鏡のWinterover(越冬観測員)として、1年間南極点のアムンゼン・スコット基地に滞在しています。家族、友達のみんな、まだ生きてます。

久し振りの星空

日の入りから2週間以上が経ち、いいかげん暗くなってきました。

太陽が地平線に沈んだあとも、散乱された光が届くので、その方角はかんたんに言い当てることができます。

多くの場合、雲がなく澄み切った空のほうがトワイライトの景色が綺麗に見れます。 ですが時折、風向きと雲の具合がうまく組み合わさったときに、地平線にとてもきれいな景色が広がります。

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すっげえ。

野菜を育てている温室にはソファが置いてあって、そこで本を読むのが好きなのですが、よく寝落ちします。 たぶん基地の中で唯一、しっかり温かい部屋です。 ある日、温室で本を読んでいた寝ていたところ、午前2時にダニーに”外の景色がすごいよ、写真撮りに行ったほうがいいよ!”と叩き起こされました。 "写真?はぁ?知るかよ...てか寒いからドア閉めろよ..."と思わなくもなかったですが、しょうがないので極寒ユニフォームに着替えて外に向かいます。衛星通信担当で夜勤のザックと一緒に外に向かいました。 温室内と当日の外の気温の差は、おそらく80度近くあったのではないでしょうか。

寝起きで多少不機嫌なまま、基地のごついドア*1を開けて外にでると、空があんまりきれいなのでびっくりしました。 ダニー、起こしてくれてありがとう。 そのときに撮ったのが上の写真です。フォトショップすれば大概、目で見た景色よりもきれいな色合いの写真にできるもんですが、このとき見た景色はこの写真よりもずっとずっときれいでした。

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ザックが写真撮っているようす。カメラも手もすぐ凍ります。

南極点あるあるですが、写真撮ってて困るのは三脚が凍って調整が一切できなくなることです。 三脚の可動部のグリース?が超低温仕様のものでないからだと思います。 なので僕の場合、調整したいときは三脚の脚のいずれかを力ずくで雪面に押し込んで、無理やり調整します。 三脚が三脚たる理由の機能を放棄です。

もうほんと三脚がちかごろ憎たらしくてたまりません。金属製の三脚は外に持っていくとキンキンに冷えるため、どれだけ分厚い手袋してて*2も持つとめちゃくちゃ寒い、というか痛いです。 まったく納得のいかない高額なお金を投入して買った三脚です。ここまで持ってくるのも重いしかさばるし一苦労でした。 必要なので仕方ないですが、いまぼくの身の回りにあるものすべての中でもっとも気に食わない存在は、自分の三脚です。

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そとはもう暗い。

そもそも何のために書き始めたか忘れてしまっていました。本題に入ります。でも2行で終わります。

暗くなってきて期待するものはみんな一緒です。最近はみんな外に出ると、空を見上げて凝視します。

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アレンが何かを見つけたようす。

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これは何座、とかそういうのさっぱりわかりません。4つまとまった星を見つけると全部南十字星に見えます。

星です。5ヶ月振りの星空です。まだまだ真っ暗ではないのではっきり、きれいには見れませんが感動です。これでいいたいことは終わりです、どうもありがとう。

*1:映画で見る銀行の金庫みたいな分厚いドア。断熱のため。

*2:どれだけふかふかでも握りしめて、圧縮されると断熱の意味ないので。