南極点でくらす1年間のきろく

アイスキューブニュートリノ望遠鏡のWinterover(越冬観測員)として、1年間南極点のアムンゼン・スコット基地に滞在しています。家族、友達のみんな、まだ生きてます。

平たくない景色

いよいよ南極点を出発したあとの話です。

talking-penguin.hatenablog.com

まずは南極大陸沿岸のマクマード基地に向かいます。

その後マクマード基地からは文明の地、ニュージーランドのクライストチャーチに戻ります。クライストチャーチにはアメリカ南極プログラムの拠点があるからです。

f:id:talking_penguin:20201209171017j:plain
南極点のアムンゼン・スコット基地の場所はいいとして、マクマード基地はそこからちょっと下。目指す文明の地、ニュージーランドのクライストチャーチはさらにその下です。(この図の出典先がわかりません。勝手に使ってすみません...)

機内では窓の外をずっと眺めていました。

外を見ながら何考えていたかは忘れました。

f:id:talking_penguin:20201209171550j:plain
あらためて何にも無いとことに一年もいたんだなと。世界最大の氷の塊にのっかっていました。

f:id:talking_penguin:20201209171537j:plain
南極大陸の氷原に浮かぶ月。

f:id:talking_penguin:20201209171542j:plain
ずーーーーっと同じ景色。

そういえばこの機体は、一年前に南極点に連れて行ってくれたものと同じです。行きの飛行機のなか、この一年が良いものになることは当時から確信していましたが*1、そのときの僕が想像できていたものなんかたかが知れています。素粒子宇宙物理の研究者*2として可能な限り正確な言葉で南極点越冬の体験がどんなものか一言でいうと、「🤯」です。

数時間経った後、隣に座っていたダニーが見てみろと遠くを指差します。

f:id:talking_penguin:20201209171557j:plain
一年ぶりに見る平たくない地形。

地平線に山の連なりが見えています。

大陸中央部のだだっ広い氷床部が終わり、Transantarctic Mountains (南極横断山脈)に到達です。

考えればもちろん知っているし予測できる展開ですが、なにしろ頭のなか空っぽでボケーっと外を見ていただけなので、とにかく久しぶりに見る平たくない地形を見て「おぉ山だ...」と驚きます。

山脈が次々にあらわれて地平線が見えなくなり始めた、なんとなくこのとき、ああなんか終わっちゃたなとふと考えてしまいました。

バスラーは山脈部に進んでいきます。

f:id:talking_penguin:20201209171707j:plain
氷じゃない地面。岩とか土とか、しばらく見ていません。

この機体、バスラーのパイロット達は、僕らが南極点でもうずっと天気のせいで待ちぼうけ食らっていたことを知っています。 気前の良い彼らは、サービスで山脈を横断中に超低空飛行をしてくれました。

f:id:talking_penguin:20201209171713j:plain
山脈の間を流れる氷河を縫うようにバスラーは進む。

さらに数時間後、ついに遠くにエレバス山が見えてきました。マクマード基地はもうすぐです。

f:id:talking_penguin:20201209171730j:plain
エレバスは活火山。写真だとよくわからないかもですが、煙?出てます。

f:id:talking_penguin:20201209171747j:plain
氷河の上のあそこに着陸。

上写真右に見える、氷河上の人工物はフェニックス・フィールドと呼ばれる滑走路。その右上に見える黒色の島みたいなのは、ロス島と呼ばれるエレバス山を含む島の一部で、アメリカのマクマード基地とニュージーランドのスコット基地が存在しています。

f:id:talking_penguin:20201209171801j:plain
マクマード基地。

南極点にいると夏だろうがなんだろうが寒かったんですが、ここマクマード基地まで北上すると緯度が77度と相当上がるのではっきりと暖かくなります。

気温は氷点”上”です。ものすごく久しぶりに水が液体でいられる場所にやってきました。

f:id:talking_penguin:20201209184409j:plain
ああ土だ。

*1:あと与圧されてない機内で高山病でくたばってた。

*2:のモグリ