南極点でくらす1年間のきろく

アイスキューブニュートリノ望遠鏡のWinterover(越冬観測員)として、1年間南極点のアムンゼン・スコット基地に滞在しています。家族、友達のみんな、まだ生きてます。

さようなら、キャサリンとベンジャミン

2019年度のウィンターオーバーのキャサリンとベンジャミンがついに南極点から離れます。

当初は先週にはとっくに出発しているはずだったのですが、飛行機が故障やら、天候不順、しまいには乗組員の体調不良等で遅れに遅れました。 結局、予定より4-5日後の火曜日に2人は南極点からLC-130で脱出です出発です。

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僕は左から2番目です*1

二人ともとても良い人で、基地の中のひとからの人望も厚いようです。 はたして二人のようになれるのでしょうか。

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あー、行っちゃう。

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キャサリンがさいご。

二人が機体に搭乗したあとも、滑走路に一人残って最後まで見送ります。

当然です。飛び立つまでが見送りです*2

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ブゥーーーーーーーーーーーーーーーン(永遠)

小一時間待ったでしょうか。待てど暮らせど機体は動きません。風もあり、体感温度はマイナス40度を下回っています。

いよいよLC-130が動き出すという段になって、寒さにカメラが悲鳴をあげ始めました。 ファインダーに映る像がバグりだし、液晶の文字はほんのかすかにしか見えません。 シャッタースピードは1/200秒のはずなのに、”カッ、、、、、、(10秒)、、、、、シャーン。”くらいでしかシャッターが動かなくなります。

これはまずいと、ポケットから手を出してカメラを抱き込みます。 今度は手が悲鳴をあげ始めましたが、どっちが大事かという話です。 カメラをぎゅっと抱き込みます。

すこしたって、カメラはなんとか動くようになりましたが、どのみち機体が巻き上げる雪煙で飛び立つ様子は全く見えませんでした。 諦めてカメラをバッグにしまいます。 小指が少し水ぶくれみたいになってるのは気のせいでしょうか。

基地に戻ると、”外でずっとつっ立ってる奴がいたけど、お前だったのか。アホなのか。”と言われました。

とにかくありがとう、キャサリンとベンジャミン。

*1:希望です。

*2:LC-130が飛び立つところを見たい。