南極点でくらす1年間のきろく

アイスキューブニュートリノ望遠鏡のWinterover(越冬観測員)として、1年間南極点のアムンゼン・スコット基地に滞在しています。家族、友達のみんな、まだ生きてます。

タイムラプス

南極点のみんなはタイムラプスの撮影が好きです。僕もやってみました。

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あれ、なんか短いな?と思ったでしょう。そんなこと言ってると地獄に落ちますよ。

以下は上の動画に至るまで大変だった話です。

何の工夫もせずに、外で三脚立てて普通にカメラ載っけてタイムラプスの撮影しようものなら、長時間露光の場合だと経験的に3分でカメラ凍死します。そこで南極点のウィンターオーバーに代々伝わる秘密兵器が必要になります。

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タイムラプス・ボックス。

アイデアは断熱材の大きめの箱でカメラを寒さと風から守るというところにあります。

基地の研究室にはIceCubeの歴代のウィンターオーバーが開発、引き継いできたこんな感じのいろんなデザインのタイムラプスボックスが何個も転がってます。ただ、みんながどんどん借りていってしまった結果、当のIceCubeウィンターオーバーの僕は最後まで残った、使いにくそうなやつ使わなくてはならない羽目になりました。ちくしょう!

でもよく見ると中がすごくシンプルな構造になっているおかげで、俺仕様にする余白がたくさん残っていることに気がつきました。 南極点で一番のタイムラプスボックスにしてやろうと思います。 冬が終わる頃には、お前のタイムラプスボックスがナンバーワンだと皆に言わしめる予定です。

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フタ開けるとこんな感じ。

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熱湯を入れたナルゲンボトルで内部を保温。

一般的に*1タイムラプスボックスの欠点は、角度を決めづらい(構図を決めにくい)ことと言われています。 雪面に置くだけなので、水平をとったり仰角を決めたりするのが難しいのです。

そこで技官のキャルに、三脚にこのタイムラプスボックスを固定できるような治具を作ってもらえないか相談しました。

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ぼくの適当なアイデアを元に、ささっと作ってくれました。感動です。

あまりにも思ったとおりの理想的な治具を作ってもらえました。

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マイ・タイムラプス・システム

タイムラプス・モンスターの誕生です。

このシステムで撮影した、はじめてのタイムラプスが冒頭のやつです。もっかい貼ります。

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残念ながら、まだカメラの保温が万全でないせいか4時間しか持ちません。うまくやってる人は7-8時間の撮影に成功したりしてるので、まだまだ改良が必要です。

おしまい。

*1:「一般的に」=「南極点のウィンターオーバーの間で」