南極点でくらす1年間のきろく

アイスキューブニュートリノ望遠鏡のWinterover(越冬観測員)として、1年間南極点のアムンゼン・スコット基地に滞在しています。家族、友達のみんな、まだ生きてます。

南極点の日暮れ

いよいよ極夜がやってきます。南極点では3月21日がサンセット・デー*1でした。

先週の頭くらいから、南極点はいよいよ日暮れの様相をみせてきていました。

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IceCube Laboratory

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南極点の他の望遠鏡たち。

21日には、サンセット・ディナーと題して極夜の到来をみんなでお祝いしました。

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ウィンターオーバー全員で協力して準備します。

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なんて美しい景色でしょうか。

多くの人はいつもの格好ではなくて、きちんとしたジャケットやらドレスやらをきて参加します。 ぼくも、ここに来てからこれまで一度も使っていない、シャツ、ネクタイ、ジャケットとパンツの一式を引っ張り出してディナーに臨むことにしました。 (関係ないですが、いまだにズボン*2のことをパンツと言うのに抵抗があります。じゃあ下着の方のパンツはなんて言えばいいのでしょうか。あ、下着か。 )

残念なことに、日本で買ったときには着れたシャツがもう着れないことが発覚です。 ウェストはまだどうにかなるんですが、首元のボタンが一向に閉まりません。 食いすぎたぼくのせいではありません、それを提供したアメリカのせいです。

ほかのシャツなんてないので、なんとかするしかありません。 なんていうか、首のところを背伸びするかんじをキープして、なんとかボタンを締めることができました。 常にあごを上げながら首をしめられているような感覚です。

ディナーの前にはカクテルタイムが設けられ、バーテンダーの経験を持つダニーが急造で作ったバーでみんなにカクテルを提供します。

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グラスを冷やすためだけに、基地内の冷凍庫で作った氷を使います。窓の外は南極点で、外はマイナス60度です。贅沢だ。

カクテルなんておよそジントニックくらいしか知らないですが、”サプライズミー”と頼んで作ってもらったカクテルは、”なんとか・ジン・なんとか”です。 ローズマリーがのっかってました。ローズマリーがのってて、ジンベースのなんかうまいやつです。そういやレモン汁も使ってました。なんて名前かご存知でしょうか?

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これが”なんとか・ジン・なんとか”です。

ディナーのあとは、いつものように体育館を映画館にしてみんなで映画鑑賞です。"Knives Out"という映画を見ました。コメディの要素のあるミステリーだったと思います。正直、こういう系はセリフが難しすぎて何言ってるかついていけません。途中すこし寝てたのは秘密です。

そういえば、日が沈むことの話でした。

雲がなければ、”グリーンフラッシュ”なる現象を始めとして、おもしろ現象が移り変わり観察できる予定だったのですが、今年は地平線に少し雲が出てしまって残念ながら見れませんでした。 南極点でもう十数回越冬している、超有名なウィンターオーバーのヨハンがみんなに”今年はちょっと天気が微妙だね”と教えてくれます。 ベッドに行く前に食堂の窓辺に張り付いて、みんなで何時間もずっと眺めてて、ずっといろんな話をして、それはそれでおもしろイベントでしたが。

といってもせっかくの機会なので、外に写真を撮りに出かけました。ちなみに、もう死にそうに寒いです。体感気温じゃなくて、気温がマイナス60度です。体感気温だとマイナス90度です。

日が暮れて1-2日たった今日は、なんやかんやまだぼんやり明るいですが、いよいよ極夜が始まりました。次に太陽をみるのは9月23日の予定です。

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各国の旗で囲っているちっさいポールがCeremonial South Poleです。

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夕暮れのIceCube Laboratory

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さようなら太陽。

*1:定義は太陽の半分以上が地平線に沈むこと

*2:そもそもズボンで何語。