南極点でくらす1年間のきろく

アイスキューブニュートリノ望遠鏡のWinterover(越冬観測員)として、1年間南極点のアムンゼン・スコット基地に滞在しています。家族、友達のみんな、まだ生きてます。

エクストリームさんぽ

アムンゼン・スコット基地に滞在するひとは、研究者だろうがなんだろうが全員、掃除や皿洗いなどの基地運営の手伝いをする義務があります。 最小限のリソースで基地をまわすために必要なことだと思いますし、コミュニティの一員であることを自覚するためにも良いことだと思います。

加えて医療、消防などの緊急対応に特化した有志によるチームが存在します。 各々が自分の仕事を持っている以上ボランティアのレベルに留まりますが、定期的に訓練を行うなど全員が真剣に取り組んでいるように感じます。 動機はもちろん、基地でなにかがあっても誰も助けに来てくれないからです。

ぼくはファイアーチームの一員です。 IceCubeの歴代のWinteroverにすすめられて、ファイアーチームを選びました。 南極来る前にデンバーで1週間訓練してきています。 talking-penguin.hatenablog.com

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訓練を終えたあとの記念写真。
僕たちのチームはキャプテン・ジョンソンのお墨付きです。

アムンゼン・スコット基地に来てからも、まだ日が浅いですが週に1回訓練をしています。

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火事の現場に向かう想定。ギアも消化器も重い...(Image credit: Benjamin Eberhardt, IceCube/NSF)
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救助訓練。押してるこっちが疲れて死にそう。(Image credit: Benjamin Eberhardt, IceCube/NSF)

まじめに取り組んでいますが、楽しみながらやってます。 例えば、きのうは激しい運動をしてどれくらい空気ボンベが保つか体感するために、夕食の後に消防服フル装備で基地の地下奥深くを散歩しました。

面白いのはアムンゼン・スコット基地の地下部分は、実は先代基地のなごりです。 数十年前の建設当時は雪面にあったものが、毎年少しずつ埋もれて今では完全に埋まってしまっています。 2008年頃に先代の基地は取り壊されたのですが、一部を今の基地の倉庫、ガレージとして活用しています。

食料庫、燃料庫のあたりを歩き回ります。 このへんは温度管理されてないので、勝手に冷えてすべてバッキバキに凍っています。

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食料庫。このころはまだ余裕があった。

壁面に霜がびっしりついていますが、聞いた話ではぜんぶ人間の息が数十年間に渡って凍ってできたものらしいです。 なんていうか感想に困りますね。

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燃料庫の入口

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温度計が振り切れる。

いったい何度なんでしょうかね。マイナス50度くらいですか。 これでも冬になれば外よりは温かいそうです。

空気ボンベの残量が寂しくなってきたので戻ります。

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階段を上り下りする訓練拷問。

駆け上がってるように見えますよね。 暗くてシャッタースピードが遅いだけです。ゾンビの動くようすを思い浮かべてもらったら、だいたいそんなもんです。

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左)余裕でないひと。右)余裕のひと。

階段が嫌いになりました。