南極点でくらす1年間のきろく

アイスキューブニュートリノ望遠鏡のWinterover(越冬観測員)として、1年間南極点のアムンゼン・スコット基地に滞在しています。家族、友達のみんな、まだ生きてます。

ケイジャン・シーフード・ボイル

先日はついにマイナス70度を下回りました。相変わらずアホほど寒く、オーロラが空に爆発している南極点です。

基地で毎日料理を作ってくれる料理長のジークはテキサス州出身です。 よく作ってくれるアメリカ南部料理やケイジャン料理はどれもほんとうに美味しいです。

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めちゃくちゃいい人です。よく笑うので一緒に映画をみると映画が10倍面白くなります。

木曜日は「ケイジャン・シーフード・ボイル」の日でした。ここまで半年で一度も出なかった新しいメニューです。2週間前から楽しみにしていました。

ザリガニで出汁をとったスープでシーフード、ソーセージやポテトを煮ます。

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煮たエビを取り出しているところ。このぜったいうまい煮汁、残念ながら捨てます。

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ケイジャンスパイスをふりかけているところ。

一旦、キッチンからオフィスに戻って仕事を終えたあと、夕食が始まる時間に食堂に戻ると衝撃の光景が広がっていました。

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山盛りのカニ。

まさかの超巨大なカニ脚も同時提供です。

僕がこれまで生きてきて見た中で、印象として一番ガタイがデカかったのは名古屋駅で見た大魔神佐々木です。 当時、「あ、(元)メジャーリーガーだ!」という驚きよりも、駅にいる周りの一般的愛知県民に比べてあまりにも彼が大きく、「(まさに)だっ、大魔神だ...!」と思ったことを覚えています。言うなればこのカニ脚は、大魔神佐々木です。

アホほどでかいカニは、もちろんポン酢とかそういうのでは食べません。 溶けたガーリックバターにたっぷり浸してかじりつきます。あぁうめえ...。 それに、言うまでもなく食べ放題です。料理長いわく、「いっぱいあるから好きなだけ食え。」とのことです。 どの脚も殻パンパンに身が詰まっていて、夢にみるようなメジャー級のカニ体験です。 どうもありがとう、アメリカ。

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重い。

このカニ脚、とんでもないサイズなので爪も巨大で、とても手では割れません。この巨大な爪がついてる脚は食べにくいせいか、あまりみんな手をつけません。 チャンスです、遠慮なくいただきます。 非力な僕が爪と格闘しているのを見かねて、ジークがキッチンからハンマーを持ってきてくれました。 机を壊さないように力を加減して爪を叩き割ります。

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食べ始めのころ。

ところでアメリカ中西部出身のジョンはシーフード嫌いです。罰当たりなジョンのためにも彼の分までカニを食べてあげます。 こんな風に、ここぞとばかりにがっつく僕に比べて、まわりのみんなは割と冷静で、「おっ、きょうはカニか。」くらいのテンションです。 ハンマー振り回して一心不乱にカニを食う僕をみて、みんな笑っています。 この日だけで、エビ20尾、さらに一般的日本人が食べるカニの量の5年分は食べたと思います。嘘ではありません。 食後にはボストンクリームパイなる、おいしいデザートもいただきました。大満足です。

驚くのは、この日はほんとうになんでもないただの木曜日です。しかも2日後はMid-Winterといって、極夜の折り返しを南極大陸全体で祝うお祭りで超豪華なディナーが予定されています。それに、1週間後の今日は「ステーキ・アンド・カニ・デー」が間髪入れずやってきます。なんてこった...