南極点でくらす1年間のきろく

アイスキューブニュートリノ望遠鏡のWinterover(越冬観測員)として、1年間南極点のアムンゼン・スコット基地に滞在しています。家族、友達のみんな、まだ生きてます。

テキサス・ロードハウス・ヒーハー

2ヶ月半に及んだ、マディソンでのトレーニングが完了しました。

f:id:talking_penguin:20191018124925j:plain
もしなくしたら途方に暮れる、トレーニングのすべてが詰まったノート。

思えば沢山のことを勉強しました。

印象的だったことがあります。 ある日のトレーニングで、”今日はFirewallについて覚えてもらうよ!”と言われました。 きょうびFirewallと言ったら、ネットワークにおけるセキュリティの一つのやり方ですよね。 でも元々の意味は、もちろん防火壁を指すわけです。 Winteroverのトレーニングの場合はどちらでしょうか?

正解はどっちもです。 ネットワークセキュリティだけでなくて、測定システムがあるサーバー室の温度管理(防火)についても学ぶ必要があるのです。

これはただの一例ですが、2ヶ月で学んだことはとても多岐に渡ります。 幸いなことに、大学のときとポスドクしてたときの経験がとても役に立って、なんとかついていけました。

温度管理についての小ネタです。

測定システムのある建物のサーバー室でボヤ、ないし室温が異常に高くなったとき、どうすればいいと思いますか?

勘の良い冴えたひとなら、”すぐ外は(地球最強レベルで)寒いんだから、ドア開ければいいじゃん!”と思うでしょう。

そんなあなたは、大不正解です。 そんなことしようものなら、ドアに近いサーバーから次々と冷えすぎてぶっ壊れていくそうです。 そもそもが、われわれのサーバー室は、世界でも数少ないであろう、常に暖房で温め続けなければならないサーバー室です。 サーバー管理してるひとならきっと驚いてくれるでしょう。 なにせ南極点なめてはいけないのです、冬には外はマイナス80度とかいっちゃうのです。 そういうことなのです*1

   

さて、ここからはステーキの話です。

トレーニングが完了した日、指導してくれたボスらと一緒にTexas Roadhouseというチェーンのステーキハウスに行きました。 とにかくでかいステーキが食いたいという、ぼくからのリクエストを聞いてもらえました。 ありがとうボス。

さすがステーキハウス、リブアイ/ニューヨークストリップ/サーロイン等、さまざまな部位やカットが選べます。 でもこの日はそういうことではないんです。 ウェイトレスが来たときに何をいうかは、もう決まっています。

何にするか聞かれるやいなや、

”部位はもうなんでもいいから一番でかいステーキはどれ?”

と聞くと、

”今日用意できるなかでは、23ozのポーターハウスステーキね。日によってはもっと大きいスペシャルカットがあるんだけど....”

と教えてくれました。23ozは652グラムです。

f:id:talking_penguin:20191018095802p:plain
この瞬間、まさにこの顔だったと思います。

非常に不満でした。

2ヶ月半の間、Winteroverのトレーニングと並行して胃袋もトレーニングしてきました。 特別な日のディナーなのに、652グラムのステーキでは到底満足できません。 こちとら昨日から、わざわざコンディションを整えて来ているのです。

危うく、”じゃあ二枚重ねて焼いてくれや!”とか言いそうでしたが、ボスの手前、みっともないことはできません。 なやんだ挙げ句、メニューの前菜コーナーに秘伝のスペアリブみたいなのを見つけたので、ポーターハウスステーキと合わせてオーダーします。

食事がくるまでの間、テーブルの上のお代わり自由なバターロールにシナモンバターをたっぷり塗りつけて、ビールで流し込みます。

はじめにきたスペアリブは、ブタのあばら骨4-5本分くらい使った本気のやつです。 前菜の定義を問うようなサイズでしたが問題ありません。 ”もしよかったら少し食べてね。”と形だけみんなに伝えたあと、自分のゾーン奥深くに皿を引き込んでひとりで全部食べます。 どんな味か説明が難しいのですが、なんかこう、すごくうまいBBQ味です。

f:id:talking_penguin:20191018113018j:plain
肉肉肉肉肉肉肉肉

ステーキも来ました。肉ってうめえー。 聞いたところでは、南極点でもステーキ食べられるそうです。うれしい。

お店の中では終始、誕生日のひとを祝う的なイベントが繰り広げられています。 ウェイトレスと客がヒーハー!と叫んでました。 しかし、ヒーハーってほんとに言うんすね。感動しました。

テーブルの上がきれいになったころ、アメリカにきて何食べた?みたいな話をするなかで、アイスクリーム屋には行ってみたか聞かれました。 確かにアイスクリーム屋はちらほら見かけるのですが、入ってみたことはないです。 そのことを伝えると、

”そんなのいけない!おいしいアイスクリーム屋があるんだけど、まだ食べられる?”

と聞かれました。

”おれはコンディションを整えてきたんだ。まだスペースはある、いける。”

と伝えます*2

ステーキハウスを出た車は、マイケルズ・フローズン・カスタードを目指しモノーア湖の南側に向かいます。 湖を挟んで向こう側に、丘に広がるマディソンのダウンタウンがとても綺麗に見えます。

f:id:talking_penguin:20191018114919j:plain
アイスのお店。出入口に何台も体重計が置いてあったのは、客への皮肉かなんかでしょうか。

おすすめにならってベンガルタイガーという、えらい名前のアイスにしました。 ”スモール”サイズを頼みましたが、でてきたアイスはもちろんスモールではありません。

ものすごくクリーミーで美味しいアイスのなかに、ピーナッツバターの塊をチョコレートコーティングしたのを砕いたやつが山盛りで入ってます。 さらには、オレオのふりかけつきです。

終わってみれば素晴らしい夜になりました。 知りませんが、きっとこの夜だけで1万キロカロリーくらいいったに違いないでしょう。 そういえば、さっきのステーキハウスでお土産に(なぜか)袋一杯のピーナッツももらっています。

まとめると、全部食べきれたのはマディソンないしアメリカでのトレーニングの成果です。

デンバーでのトレーニング&南極点に向けて準備万端です。ヒーハー!

*1:どうすればいいかは説明が面倒なので飛ばします♫

*2:とっくのむかしスペアリブの段階で満腹です。